シュワっとしたら太古の海!一滴の塩酸で暴く、石ころのミステリー(石灰岩とチャートの分け方)

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道端に落ちている、白くてすべすべした石。あなたなら、その石の正体を知りたいと思いませんか? まるで科学捜査の探偵のように、たった一滴の「魔法の液体」で、その石が何千万年も前にどんな場所で生まれたのか、その壮大な物語を解き明かすことができるんです。

今日は、見た目がそっくりな2つの岩石、「石灰岩(せっかいがん)」「チャート」の謎に迫ります。

容疑者はそっくりな2つの岩石

ここに、見た目がとてもよく似た2つの岩石があります。一つは太古の海の生き物たちが残した贈り物、もう一つはガラス質のプランクトンの死骸が固まった、硬い岩石です。さあ、どちらがどちらでしょう?この謎を解くカギは、それぞれの岩石が持つ「成分」の違いに隠されています。

石灰岩:サンゴや貝殻、プランクトンの殻など、大昔の海の生き物たちの死骸が海底に積もってできました。主成分は炭酸カルシウム(CaCO₃)。学校のチョークやグラウンドの白線も、この仲間です。

チャート:放散虫(ほうさんちゅう)のような、ガラス質の殻を持つとても小さなプランクトンの死骸が、深い海の底で長い年月をかけて固まってできた岩石です。主成分は二酸化ケイ素(SiO₂)。水晶と同じ成分なので、とても硬いのが特徴です。

成分が違うということは、何か決定的な証拠が見つかるはず。そこで登場するのが、今回の「魔法の液体」、うすい塩酸です。

決定的瞬間!一滴の塩酸が語る真実

それでは、実際にうすい塩酸を垂らして、それぞれの岩石の反応を見てみましょう。動画では、比較のために「凝灰岩(ぎょうかいがん)」という火山灰が固まった岩石も登場します。

いかがでしたか? 石灰岩に塩酸をかけたときだけ、シュワシュワと泡が出ているのがはっきりと分かりましたね!

この泡の正体は、二酸化炭素(CO₂)です。石灰岩の主成分である炭酸カルシウムが塩酸と化学反応を起こし、二酸化炭素の気体が発生したのです。これが、あの「シュワシュワ」の正体です。

化学反応式で見てみると、このようになります。

(炭酸カルシウム + 塩酸 → 塩化カルシウム + 水 + 二酸化炭素)
一方、チャートの主成分である二酸化ケイ素は、うすい塩酸とは反応しないため、何も変化が起きません。

たった一滴の塩酸が、見た目ではわからない岩石の生まれ故郷と、その成分という「正体」を見事に暴いてくれました。道端で白い石を見つけたら、それはもしかしたら、大昔の海の生き物たちが私たちに残してくれた、壮大な物語が詰まったタイムカプセルかもしれませんね。

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